近年、微生物の産生する生理活性物質の存在が確認されており、植物の成長促進剤として腐植物質が有効であることもトマト、稲などにおいて認められている。しかしながら、自然現象における腐植物質の機能性の評価法、メカニズムの解明については統一的見解は未だ得られていない。当研究では根圏領域における物質の移動を腐植物質の移動胆体としての機能に基づくものとして捉え、外部根圏の移動媒体の疎水性評価、および腐植物質の両親媒性機能の分布を評価した。[Co(NCS)_4]^<2->イオンは水溶液中においては通常生成しない濃度条件でも、疎水的な高分子共存下では親水的な高分子共存下および水溶液中と比べて、みかけの吸光係数が大きくなり、錯生成が促進される。外部根圏でのムシゲルの主成分であるポリガラクツロン酸共存下において、[Co(NCS)_4]^<2->イオンのスペクトルが観測された。現在、様々な条件における植物体(イネ、ミズナ)の根圏に疎水性プローブとしての[Co(NCS)_4]^<2->イオンを共存させ、外部根圏の疎水性を評価を行っている。腐植物質はマイナスの電荷を持っているため吸着胆体としてマイナスの電荷を持つ陽イオン交換樹脂を用いると、吸着胆体と腐植物質の電荷密度の積が大きいほど電荷反発が強く、また疎水的吸着力が小さいほど速く溶出される。すなわちこれら疎水的吸着力と電荷反発力とのバランスにより溶出位置が決まる。ここで、疎水的吸着力と電荷反発力との比をHEB(hydrophobic-electrostatic balance)として定義し腐植物質の両親媒性機能の分布を評価した。
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