微生物によって生産されるバイオポリエステルは、生分解性プラスチック素材として利用できる環境低負荷型の高分子材料である。バイオポリエステルの生合成経路は、モノマー供給酵素とバイオポリエステル重合酵素の2つの酵素から構成されており、ポリマー中のモノマー組成比はこれら生合成系酵素の基質特異性に依存して変化する。しかしながら、既存の生合成経路により合成されたバイオポリエステルは、フィルム状に成形加工することができず、そのため生分解性プラスチック素材としての利用は特定の用途に限られているのが現状である。そこで本研究では、代謝工学的な手法を用いてバイオポリエステル生合成経路を構築し、モノマー組成比を自在に変化させることにより、フィルム状に成形加工可能な高性能バイオポリエステルを創製することを目的としている。 平成13年度は、既存のモノマー供給酵素とは基質特異性が異なる酵素[(R)-特異的エノイルCoAヒドラターゼ(PhaJ)]の探索を行った。バイオポリエステル合成微生物であるシュードモナス属細菌についてゲノム情報を利用して探索した結果、4つの新規酵素を見つけだした。これらの酵素学的性質について検討を行い、それぞれ基質特異性や立体特異性が異なる酵素であることを明らかにした。また、バイオポリエステル合成に適用すると、使用した酵素(PhaJ)の基質特異性に応じてモノマー組成比を変化させることが可能であった。これらの結果は論文にまとめ、現在、投稿中である。平成14年度は、生産したホリマーの高分子物性について検討を行い、高性能化のためのデザインを行っていく予定である。
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