研究概要 |
私達は,生きた微生物細胞を検出する様々の原理,装置の開発に関する一連の研究を行ってきたが,その豊富な経験から「生きている」ことの指標としてグルコースのような基本的基質を取り込む活性が有望であるとの考えで,蛍光グルコース2-[N-(7-nitrobenz-2-oxa-1, 3-diazol-4-yl)amino]-2-deoxy-D-glucose(2NBDG)を開発し,その細胞内での動態を解析してきた。本研究は,この基礎研究に基づくものであり,生きている細胞のみをわずか1分以内で,しかも10個以内の細胞数でも,迅速高精度に検出できる,マイクロバイオアッセイ法を開発することを目的としている。本年度得られた成果を以下に示す。 (1)2NBDGの合成・生成プロセスの効率化: 2NBDGの合成法,精製法の基本的条件は既に確定しているが,精製効率の向上が望まれていた。今年度は,精製の最終段階で使用するカラム担体の再利用が難しくコストが高かったので,これの洗浄,再生条件を検討し,最適条件を決定することができた。 (2)飲料用試料中の微生物検出: 上水や乳飲料に既知の個数(10〜100個の範囲)の微生物細胞(大腸菌や酵母)を添加し,試験用液体試料を調製しこれの中の生菌数を2NBDG法で実測した。この測定結果と従来法(コロニー形成法)による測定結果と比較したところ,高い相関を得ることができた。 (3)標準プロトコールのドラフト作成: 上記実験の結果に基づき,試料の容量,ろ過方法,2NBDG取りこみ条件,蛍光細胞のカウント法など,細部に至る手順を規定し,誰が実施しても再現性の良い結果が得られるようなプロトコール(試験手順書)のドラフトを作成した。
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