エストロゲンは高等動物における生殖細胞の分化・増殖を厳格に制御する。その制御機構は、転写因子である核内レセプター依存的な標的遺伝子群の転写制御、および標的遺伝子産物(mRNA)の安定化/不安定化制御であると考えられている。特に、特定標的遺伝子のmRNA安定化/不安定化制御は重要な制御段階の一つと考えられているが、その分子メカニズムについては不明な点が多い。本研究ではmRNA分解制御因子の一つとして知られているAUF1に注目し、ラット子宮組織におけるエストロゲンによるAUF1遺伝子発現制御を詳細に検討した。その結果、AUF1のmRNA自身がエストロゲンによって安定化制御を受けていることが明らかになった(Y.Arao et al. Biochem. J. 2002)。また4種存在するAUF1アイソフォームmRNAのうちエストロゲンによって安定化され、蓄積量が増加するのはp45/p40のアイソフォームであった。AUF1の特定アイソフォームmRNAが安定化される機構について検討したところ、翻訳制御と何らかの関係があることを見いだした。現在、詳細な解析を行っている。 AUF1のmRNA安定化・不安定化機構への関与を検討するためにMCF7細胞を用いてmRNA分解解析系を構築した。今後この系を用いてAUF1の機能を検討していく予定である。
|