研究概要 |
エストロゲンレセプターの分子結合部位を含むドメインを,活性測定法が確立した酵素であるアルカリホスファターゼに挿入し,さらに変異と選択を繰り返して,エストロゲン様物質に対するセンサータンパク質を創出するために,本年度は,以下の2つの準備的な研究を並行して進めた. (1)挿入型融合タンパク質の構築 エストロゲンレセプターをアルカリホスファターゼに挿入する際,挿入位置が不適切であると,アルカリホスファターゼの構造が不安定になり酵素活性が失われてしまう.そこで,まず挿入可能部位を検索するために,アルカリホスファターゼの立体構造上表面に位置する5つの部位(アミノ酸残基番号:189,250,315,360,408)に,制限酵素部位を含む6アミノ酸をコードする配列を挿入した変異体遺伝子を構築した.変異体タンパク質を大腸菌内で発現し,パラニトロフェニルリン酸の吸光度の変化を指標としてホスファターゼ活性を測定したところ,特に,408部位挿入変異体が野生型の約50%という高い活性を維持しており,他の4つの変異体もすべて数%の活性を維持していた.そこで,5つの部位全てにエストロゲンレセプターを挿入することとし,レセプターの両端に2ないし11アミノ酸残基の2通りのリンカーをもつ,合計10種類の挿入型融合タンパク質遺伝子を構築することができた. (2)進化分子工学のスクリーニング系の構築 アルカリホスファターゼ活性を指標としたタンパク質のスクリーニング系として,PVDF膜を用いた活性染色スクリーニング法の構築を試みた.具体的には,寒天プレートからPVDF膜に転写した大腸菌コロニーを溶菌させ,タンパク質をPVDF膜に吸着させた.そのPVDF膜を,アルカリホスファターゼの加水分解により青色を呈する基質である5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸を含む染色槽に浸すことによって,コロニーに対応するスポットを活性染色することができた.
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