ニワトリ胚でBMPシグナル伝達を阻害するためにレトロウイルスベクター(RCASBP)を用いてBMPの内在性インヒビターの一つであるnogginを発現させたところ、胚全体の発達が著しく損なわれ脊髄の運動ニューロン死が起こる前から異常な胚が形成されることを確認した。また神経管になるべく限局させてウイルスを感染させる場合は運動ニューロンでの有効な発現を達成するのが困難であった。そこで本研究の推進のためにはnogginあるいはdominant-negative BMP receptorを(1)運動ニューロンになるべく限局させて発現させる、あるいは(2)運動ニューロン死が起こる時期に限局させて発現させるといったウイルスベクターによるより高度な発現制御が必要であると考えられた。そこでこのウイルスベクターをTet regulationと組み合わせて用いることによりドキシサイクリンによって遺伝子発現誘導が惹起されるような系を検討してみた。その結果、CMVプロモータを用いてreverse tetracycline-controlled transactivatorを発現させた場合GFP遺伝子がドキシサイクリン投与によって網膜色素上皮や肝臓に非常に効率よく発現誘導されることが確認された。CMVプロモータを別の調節領域に置換することにより運動ニューロンでも同様の効果が期待されるのでこの系をnogginあるいはdominant-negative BMP receptorに応用する予定である。現在運動ニューロンで機能するプロモータを探索している。
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