本研究においてはP/Q型Caチャネルをコードするalpha1A遺伝子内にN型Caチャネルをコードするalpha1BサブユニットのcDNAを挿入し、P/Q型チャネルが本来機能すべきところをN型チャネルに置き換えたノックインマウスを作製する。そして、これらの構造上類似したチャネルが機能的に等価であるのか、すなわち、alpha1Aの欠損をalpha1Bで補うことが可能かどうかをマウス個体のレベルで検討する。本年度は、ウサギalpha1B cDNAをalpha1A遺伝子に挿入したノックインマウスの作製を試みた。 昨年度樹立したノックインES細胞を用いてキメラマウスを作製した。そして、このキメラマウスをC57BL/6系マウスと交配し、ノックインヘテロマウスを得た。さらに、このF1ヘテロマウスどうしの交配によりF2世代を得た。その結果ノックインホモマウスは、既に報告されているalpha1Aノックアウトマウスと同様の症状を示し、離乳期頃に死亡することが明らかとなった。しかし、ノックインマウスに導入されたウサギalpha1Bの発現レベルはあまり高くないことが示唆されたので、現在のところalpha1Bでalpha1Aの欠損を補償することができないとは断言できない。現在は、alpha1B cDNAを挿入する際に同時に挿入された選択マーカーであるハイグロマイシン耐性遺伝子等をFLPeリコンビナーゼとその認識配列であるFRTのシステムを用いて除去することによりウサギalpha1Bの発現量を増大させることを試みている。このいわば第二世代のノックインマウスを今後解析することにより、alpha1Aとalpha1Bの機能的な関係についてより厳密な議論ができるものと考えられる。
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