研究概要 |
過分極で活性化される陽イオンチャネル(Ihチャネル)は、心臓の洞房結節や神経細胞において重要な役割を果たしていることが知られている。IhチャネルはHCN1,2,3,4と呼ばれている4種類のcDNAが哺乳類においてクローン化されている。そして、それぞれのサブタイプによって過分極による活性化の速度が違うことが知られており、その活性化速度の違いはそれぞれのサブタイプの役割の違いをもたらしていると考えられている。 サブタイプで一番活性化速度の速いのはHCN1で遅いのはHCN4であり、その違いは20倍にもなる。その違いを引き起こす構造的な差異を見つけるためにまずはHCN1と4とのキメラチャネルを作製し、哺乳細胞発現系とホールセルパッチクランプ法を用いその活性化速度を測定した。その結果、まずは第一膜貫通領域付近を入れ替えると大きな活性化速度の違いが起き、さらに第六膜貫通領域とサイクリックヌクレオチド結合部位との間を入れ替えると活性化速度に変化が見られた。このことから、二つの領域の違いがサブタイプ間の活性化速度の違いを引き起こしているものと考えられた。さらに、第一膜貫通領域では数個のアミノ酸残基によってその活性加速度が大きく影響を受けることを明らかにした。Ihチャネルは構造的には、電位依存性のカリウムチャネルと同様の6回膜貫通領域と一つのポアー領域を持つ基本構造を持っているが、過分極で活性化されるという特徴的な性質がある。今回明らかになった活性化速度に影響する二つの部位は、電位依存性カリウムチャネルではほとんど機能に影響を及ぼさなかった部位であり、このチャネル特有なもので、過分極で開くというこのチャネル独自の性質の分子的メカニズムの解明にヒントを与えるものであるかもしれない。
|