過分極で活性化されるという他のチャネルと違った性質を持つイオンチャネルである陽イオンチャネル(Ihチャネル)の構造と機能の関係を明らかにする目的で研究を行った。4種類のクローン化されたIhチャネルのなかで、HCN1が過分極による活性化の速度が一番速く、HCN4の速度が一番遅い。前年度に、HCN1とHCN4との間で様々な約20種類のキメラを作製し、哺乳細胞発現系(COS7)とwhole cellパッチクランプ法を用いて、その活性化速度を測定し、活性化速度に大きく影響を与える領域が第一膜貫通領域であることを明らかに、さらに点変異を導入して、活性化速度に影響を与えるアミノ酸残基を決定した。しかしながら、脱活性化速度を比べると、HCN1はHCN4より脱活性化の速度が約7倍遅いが、活性化速度に大きな影響を与えた第一膜貫通領域だけでは、脱活性化速度にはほとんど影響を与えなかった。今年度は、さらなるキメラを作製し、脱活性化速度を測定したところ、膜電位感受性部位と考えられている第4膜貫通領域とイオンを通すと考えられているポアー領域を含む第3膜貫通領域から第6膜貫通領域までの部位は脱活性化速度にも活性化速度にも全く影響を与えず、N末やC末領域が大きく影響を与えることを明らかにした。今までの電位依存性カリウムチャネルで知られているのと違って、サブタイプよる性質の違いがN末やC末によって決定されることを明らかにした。 Ihチャネルは過分極で活性化されるにもかかわらず、脱分極で活性化される電位依存性のカリウムチャネルとほぼ同様な6回膜貫通領域と一つのイオン透過性部位を持ち、その活性化機構は興味を持たれていたが、本研究によって、Ihチャネルにおいてはチャネル全体の構造変化が活性化および脱活性化速度に重要であることが示唆された。
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