PLCδ_1由来のPHドメインはIP_3及びPIP_2に対して特異的に結合し、IP_3対する親和性がPIP_2の20倍である。PLCδ_1由来のPHドメインを持つGFP-PHDδ_1融合蛋白質を大腸菌を用いて作製した。またPIP_2及びIP_3の結合に必須なリジン残基をつぶした変異蛋白質(GFP-PHDδ_1KN)も作製し、Hisタグにて精製し、プローブとして用いた。卵内でのGFP-PHDδ_1の移動によるIP_3可視化システムとして時間・空間分解能を上げるために2波長励起1波長測光系を採用し、GFP-PHDδ1とのレシオメトリックな解析に用いる他方の蛋白質としてGFPuvを用いた。両者をマウス成熟卵に顕微注入し、480nmと380nm励起による蛍光強度比を測定すると卵細胞膜に強いシグナルが得られ、プローブはin vivoで細胞膜PIP_2にターゲッティングすることが観察された。100μM以上のIP_3注入によりプローブは注入直後に細胞質に速やかに拡散し、10分後迄に漸次的に再び細胞膜へ局在した。この移動はGFP及びGFP-PHDδ_1KNでは認められず、プローブの細胞質への移動がIP_3への特異的結合によることが確認された。しかしIP_3濃度が100μM以下ではプローブの細胞質への移動が観測されず、Caオシレーションを誘発するのに必要充分であるIP_3濃度(10μM)に感度が満たなかった。また体外受精時のGFP-PHDプローブの局在について観察したが、変化は認められなかった。プローブが充分な感度を得られなかった点についてはプローブのバッファー効果の他に休止状態の卵内IP_3濃度が高い可能性が考えられ、現在この点を検討中である。
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