本年度は膵臓外分泌腺のインタクトな標本を用いて2光子励起局所ケージド解離法によりイオンチャネルの機能的な分布を可視化するために、局所活性化システム、2光子断層イメージングシステム、電気生理システムから構成される測定システムの確立を主として行った。まずケージド物質が近赤外超短パルスレーザー光を2光子吸収する過程により超極微少領域でのみ活性化することを確認し、続いて外分泌腺細胞の腺腔膜領域を立体的に包含できるよう10μm^3の空間内を2000ポイントで解除できるよう空間的分解能を構成した。そこで、この手法と電気生理測定部との協同的な動作を確認するために、マウス海馬CA1領域のスライス標本において細胞外に投与したケージドグルタミン酸の2光子励起活性化実験を行った。錐体細胞をホールセル・パッチクランプし、そのスパイン領域においてグルタミン酸の2光子活性化を行ったところ、興奮性シナプス後電流と同じ時間特性を持つ一過的な内向き電流を生じせしめることに成功した。この結果、スパイン毎にグルタミン酸感受性が大きくばらついており、その感受性と形態は互いに強く相関することが明らかになった。さらにグルタミン酸受容体型チャネルの数を、ノイズ解析法を用いて定量的に評価したところ、1スパインあたり0-150個の間であった。この結果、2光子励起局所ケージド解離法は組織的標本においてイオンチャネルの空間分布や動態、あるいは細胞内局所における刺激を行うことができることが確認された。一方、インタクトな外分泌腺房標本に対してホールセルクランプを行う方法論を確立し、パッチ電極からの組織的標本内の1個の細胞へ色素が導入される様子の断層イメージングに成功した。以上のような成果を踏まえ、2光子励起局所ケージド解離システムを膵臓外分泌腺細胞にケージドカルシウム試薬を導入し機能マッピングを開始している。
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