研究概要 |
基底膜の主成分であるIV型コラーゲン分子を構成しうるα鎖は6種類存在することが知られている。私たちはこれまで未知であったマウスα5(IV)とα6(IV)コラーゲン鎖の全塩基配列を決定した。この配列情報とこれまでに報告されたα1(IV)〜α4(IV)コラーゲン鎖の配列情報をもとに6種類全部の合成ペプチドを作り、それぞれに特異的なモノクローナル抗体を作製した。この抗体を使い、マウス上皮基底膜における各α(IV)コラーゲン鎖の発現分布を解析した。その結果、IV型コラーゲン分子として、α1/α1/α2とα3/α4/α5そしてα5/α5/α6の二つの鎖構成をしているらしいことがわかった(Saito K et al. J. Biochem. : 128(3),427-434(2000))。 脳の脈絡叢は上皮下基底膜と血管内皮下基底膜を構成するIV型コラーゲン分子に違いが見られた。脳毛細血管内皮の基底腹ではα1/α1/α2分子で構成されていた。しかし脈絡叢の上皮下基底膜はα1/α1/α2とα3/α4/α5分子で構築されていた。α3/α4/α5分子の特異な働きを証明するためにco14a3発現停止マウスをMiner研究室(ワシントン大学)より受け入れ、染色剤エバンスブルーを投与して正常129マウスと比較した。Co14a3発現停止マウスと正常マウスの脳の全体及び切断面を観察し評価した結果、Co14a3発現停止マウスは、正常マウスと比較して脳の染色度合いに違いが現れた。α3/α4/α5分子は脳脈絡叢の他に腎糸球体、肺胞などに存在していた。基底膜の働きの一つに組織特典的な選択的物質輸送のフィルター機能があり、それはα3/α4/α5分子が関与している可能性があることがわかった。
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