オレキシンは近年同定された神経ペプチドで、視床下部外側野の非常に限られた神経細胞において発現している。オレキシンは摂食行動や睡眠/覚醒の制御などの重要な生理機能を担うと考えられている。本研究では400〜460nmで励起すると緑色の蛍光を発するGreen Fluorescent Protein(GFP)をオレキシン神経に特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成し、電気生理学的手法を用いてオレキシン神経細胞の性質を明らかにした。ホールセルクランプ後にカレントクランプを行うことによって細胞膜電位をモニターし、神経細胞の自発性発火頻度を観察した。オレキシン神経細胞の静止膜電位(mV)、自発発火頻度(Hz)、細胞膜容量(pF)、過分極電位(mV)等を観察し、オレキシン神経の一般的な神経細胞としての性質を明らかとした。さらに、オレキシン神経細胞の細胞外グルコースに対する応答性を明らかにするために潅流液中のグルコース濃度を変化させた時の自発発火頻度を観察した。細胞外グルコース濃度を増加させると(30mM)膜電位が過分極し、発火頻度が完全に消失した、また、低下させると(O mM)逆に膜電位が脱分極して発火頻度が増加することを明らかにし、オレキシン神経がグルコース感受性神経であることを証明した。また、強力な末梢脂肪組織由来の摂食抑制因子であるレプチンを作用させるとオレキシン神経の細胞膜電位が過分極し、自発性発火頻度が抑制されることを明らかにした。このことはオレキシン神経細胞が抹梢からの様々な情報をモニターして、それに応じた上位中枢の活動状態を調節している可能性を示した。
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