研究概要 |
今年度は以下の成果を得た. (1)Keap1遺伝子欠失変異マウスにおけるNrf2活性化状態の検討 Keap1遺伝子欠失マウス(Keap1-/-)を常法により作製し、Nrf2の活性化状態および標的遺伝子の活性化状態を解析した.肝臓の核抽出液を作製し,野生型マウスとKeap1-/-においてNrf2の活性化状態を比較してみると,Keap1-/-においては,著明なNrf2の核抽出液中における蓄積が認められた.また,Nrf2の標的遺伝子であるPi Class Glutathione S Transferase(GST)およびMu class GSTの恒常的な活性化が認められた.以上のことから,確かにKeap1がNrf2の負の抑制因子であることが個体レベルで明らかになった.興味深いことに,Keap1-/-においてはNrf2蛋白質の安定化が観察された.今後,Keap1がNrf2蛋白質分解を促進する分子機構に関して解析する. (2)Keap1タンパク質の構造/機能連関の解析 Keap1の機能を解析するために,様々な欠失変異体を作製してその機能を解析した.一過性共発現系を用いたレポーターアッセイ法により,Keap1の抑制能に関して解析した.N末端に存在するBTB領域を欠失するとその抑制能は減少した.今後,BTB領域に結合する因子の同定とともに,親電子性物質に反応するシステイン残基の同定を行う予定である. (3)Keap1と相互作用しないNrf2タンパク質点変異体を用いた解析 線維芽細胞に安定遺伝子導入したNeh2-GFPは、プロテアソーム依存性に素早く分解される。Neh2領域の蛋白質分解に必要なアミノ酸残基を同定するために、Neh2 N末端とNeh2 C末端とをそれぞれEGFPに融合した蛋白質を作製し,その蛋白質半減期を解析した.2つの融合蛋白質は,いずれも半減期の著明な延長がみられ,Neh2の短い半減期のためには,N末端とC末端の協調的な機能が示唆された.さらに,Keap1との相互作用の減弱した変異体においても,Neh2蛋白質半減期の延長が認められたことから,Neh2の分解にKeap1が関与している可能性が示唆された.
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