スクリーニングに用いる、核移植により作成した新しいマウスの系はすでに確立し、昨年よりこれを用いて片親由来の発現をするような遺伝子の探索と機能解析を開始し、母性発現遺伝子24と父性発現遺伝子18の合計42遺伝子を同定する事が出来た。現在これらを単離中であり今後とも順次見いだされたものから解析を進める。これらの中には、Beckwith-Wiedemann症候群重要責任座位のインプリンティング制御因子であるLit1、15番染色体Angelman症候群原因遺伝子Snrpn、Prader-Willi Syndrome領域のNecdin、またがん抑制遺伝子Peg3およびlgf2rが含まれ(他研究グループにより既得)、この系がインプリント遺伝子の単離に有効であることが実際に示された。この他にも父性発現遺伝子ImpactのヒトホモログIMPACTは第18番長腕にマップされたことから躁うつ病との関連が示唆されたのでこれの近隣遺伝子Hrh4の発現を調べたが、マウスでもヒトでもインプリンティングは受けていなかった。またあるがん転移関連遺伝子がゆるいインプリンティングを受けていることを見つけた。未同定のものに関しては現在その解析を急いでいる。 さらに、インプリント遺伝子の近傍にはアレル特異的なメチル化を受けるゲノム領域の存在することが多いことを利用し、ヒトゲノムドラフトシーケンスより抽出した特徴的反復配列(TR)構造のメチル化を新たに考案したHpall-McrBC-PCR法で検討し、単アレル性メチル化を受けるCpGアイランド(CpGi)の検索を行った。配列情報がもっとも正確であるヒト21番染色体をモデルに、そのCpGiのメチル化状態を網羅的に検討しまた同時にHarrプロット解析を行うことでTR構造とメチル化の相関を検証した。一定基準で抽出した同染色体上のCpGiほぼ全体にあたる140個を解析した結果、TR型CpGは高い割合でメチル化されていること(通常CpGiは遺伝子のプロモータ領域の存在しメチル化を逃れている)、また、うち数個は母親由来のアレルのみが選択的にメチル化されていることを明らかにした。現在近傍遺伝子のアレル別発現状況を解析している。
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