研究概要 |
Ns (Niigata shaker)マウスはICRマウスから突然変異により誕生した聴覚・平衡感覚障害を示す変異マウスである。我々はこの変異マウスの原因候補遺伝子、23型カドヘリンをポジショナルクローニング法により単離し、1塩基欠損によるフレームシフト変異を見出した。このマウスの聴力をABR (Auditory Brainstem Response聴性脳幹反応)を用いて測定した。ホモ個体は生後4週令において既に8kHz, 16kHz, 32kHzのいずれの音域においてもABRが消失しており、聴力を全く持つことがない。それに対して、ヘテロ個体は生後4週令においては野生型マウスと同程度のABRを示すが、生後半年を経過すると、ABRがほぼ消失してしまうことがわかった。このことは遺伝性難聴だけではなく、23型カドヘリンが加齢による難聴の原因遺伝子にもなり得る可能性を示唆している。また、我々は23型カドヘリンのトランスジェニックマウスを作製し、この遺伝子がnsマウスの表現型を抑制することができるかどうかを調べている。まず、この遺伝子の全長のcDNA配列をクローニングした。cDNA配列は全長で10065bpある巨大な遺伝子であるため、全体を2.4kb, 2.2kb, 3.6kb, 2.5kbの4つに分割した。内耳以外にも心臓、睾丸、脳などで23型カドヘリンの発現が見られるが、心臓のRNAを用いて、RT-PCRを行い、4つのDNA断片を、それぞれクローニングした。BglII, SalI, XhoIの3つの制限酵素を用い、4つのDNA断片を連結させた。この全長のcDNAクローンを23型カドヘリンのプロモーター配列と、サイトメガロウイルス・プロモーターの下流にそれぞれ連結させた。これらのプラスミッドをC57Bl/6マウスの受精卵に注入し、23型カドヘリンを高発現するマウスを作製し、nsマウスと交配を行っている。
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