(1)コンソミック系統を用いた加齢性難聴原因遺伝子(ahl)の遺伝解析系の立ち上げ準備を行ってきた。B6マウスは生後8ヵ月以内では顕著な聴力低下は認められないが、生後10ヵ月齢以降になると90dB以上の高度難聴を示す。一方、MSMは聴力低下を18ヵ月齢でも示さない。MSMマウスから1本の染色体をB6マウスに置換したコンソミック系統をABRで測定した結果、6番、10番および17染色体番が置換したマウス系統は1年を経過しても難聴を示さないことが分かった。すなわち、これらの染色体上に加齢性難聴原因遺伝子が存在する。18ヵ月齢の13番染色体および17番染色体が置換したマウス系統のコルチ器と聴覚細胞を顕微鏡観察した。どちらも老化に伴う軽度から中等度の細胞障害がみられたが、予想に反し両者に大きな差を認めなかった。17染色体番をMSM由来染色体で置換したコンソミック系統をさらにB6マウスと交配し、約150頭のマウスを作製し、聴覚検査を行っている。同時に、得られた個体の遺伝子型をタイピングし、異なった2cM-4cM領域のMSMゲノムを含むコンジェニックマウス群を選択する準備が整った。 (2)遺伝性聴覚障害モデルjsのゲノム解析を行い、その新規原因遺伝子・Sansを単離した。Sansはankyrin repeatsとSAMドメインをもつ蛋白をコードし、聴覚細胞で発現する。本遺伝子はヒト難聴を主訴とするUsher type 1G症候群の原因遺伝子であることも判明した。 (3)ICR系統が早期に難聴を示すことが分かった。すなわち、生後3-6ヵ月には高度難聴を示す。その内耳を調べると、有毛細胞の欠落が観察された。ICR系統はoutbledであるため、純系化し新しい加齢性難聴モデルになるかどうかを検討している。
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