1.初代培養細胞系の確立:胎生10.5日〜生後3日のマウスの心臓より初代心筋細胞の培養を行った。拍動は1〜2ケ月持続し、心発生過程にある胎生10.5日由来の細胞では心筋細胞の分裂像が1週間にわたって観察された。しかしその後分裂は持続せず、導入したレポーター遺伝子の発現効率も悪かった。そこで現在、温度感受性SV40 Large T導入トランスジェニックマウスから継代可能な心筋培養細胞を調製中である。 2.Nkx2.5強制発現によるAZ1転写への影響:NIH3T3細胞にCAGプロモーター下でNkx2.5遺伝子を発現させたが、AZ1の転写レベルは変化しなかった。しかしNkx2.5によるAZ1の発現調節には心筋細胞固有の因子を要する可能性があるので、上記1の不死化心筋細胞で再検討を予定している。 3.Nkx2.5ノックアウトによるAZ1転写への影響:DMSOを用いてマウス胎仔奇形腫由来P19細胞を心筋細胞へ分化誘導し、Nkx2.5を高発現するための培養条件を設定した。この細胞を用いてNkx2.5アンチセンスオリゴ(Morpholino)を用いたNkx2.5発現抑制がAZ1発現に与える影響を検討している。 4.AZ1ノックアウトマウスの解析:ホモ欠損マウスの部分胎生致死の原因を調べる目的で胎仔解析(E13.5〜18.5)を行った。ホモ欠損マウスで発育遅延による心低形成を一部に、肝低形成をほぼ全例に認めた。さらに心臓、肝臓、脳の生化学的検討で、致死直前(E13.5)の肝臓で特にオルニチン脱炭酸酵素活性と、細胞内プトレッシン濃度が著しく高値を示すことが明らかとなった。多機能臓器である肝臓の低形成は胎生致死の原因となる可能性が高く、ここに注目して肝細胞分化の指標となるアルブミン、肝内造血の指標としてグロビンなどの発現を解析するとともに、肝発生と心発生の相互の関連を検討していく予定である。
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