研究概要 |
EBV関連リンパ腫のうち,膿胸関連リンパ腫(PAL)はlatency3でありながら宿主の免疫応答を回避しており,難治性の腫瘍である.GeneChipで得られたデータによると,PALではTSA(testis specific antigen)のうちBAGE, MAGE, GAGEが高度に発現している.そこで臨床検体を用い,RT-PCR法によりTSAの発現を検出し,EBV非感染性のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)とその発現を比較した.その結果,BAGEの発現がPAL(含SCID及びcell line)において6例中4例(67%)と高頻度に認められたのに対し,DLBCLでは18例中0例(0%)とその発現を認めなかった(P<0.01).BAGEの発現は,13番染色体のプロモーター領域におけるCpG islandのメチル化により制御されていると考えられている.BAGE陽性症例において,メチル化の有無をMSP法により検索したところ,高頻度に脱メチル化が生じていた.即ち,EBV感染により腫瘍細胞に脱メチル化が生じ,本来発現が抑制されているBAGEなどのTSAが高率に発現することが明らかになった.TSAはtestis以外の宿主細胞には発現しておらず,腫瘍特異的な遺伝子治療のターゲットとなり得る.PALを含む難治性のEBV関連リンパ腫において,TSAの高発現を明らかにした事は,今後,同腫瘍の新治療法に結びつくものとして有用な結果であった. EBV潜伏感染様式とPALの転移様式における病理学的検討においては,130数例の登録症例のうち40数例の病理標本が収集された.現在免疫染色,in situ hybridizationによる病理組織学的解析を施行中である.
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