TLS遺伝子(translocated liposarcoma)は、粘液型脂肪肉腫における染色体の相互転座において、CHOP遺伝子と融合する遺伝子として単離された。本遺伝子は、ユーイング肉腫(ES)及びPNET、骨外性粘液型軟骨肉腫において同様なキメラ癌遺伝子を形成するEWS遺伝子、TAF1168遺伝子と非常に高い相同性を有するRNA結合蛋白である。TLS遺伝子の生理的な機能は不明であったがジーンターゲテイング法によりTLS遺伝子を欠失したマウスを作成し、TLS遺伝子産物がRNA結合蛋白として相同的なDNAのpairing、減数分裂に関与する可能性を見出した。今回の研究にでは、まずTLS遺伝子を欠失したマウスより胎児線維芽細胞(MEF細胞)を作成し、TLS-/-MEF細胞とTLS+/+MEF細胞とでcDNA Representational Difference Analysis(RDA)を行った。しかしながら、明らかに両者の間で発現に差のある遺伝子は同定できなかった。このようなことから、マウスの精巣より、減数分裂期であるパキテン期の細胞を分離しcDNAchipを作製し、それを用いTLS遺伝子の標的遺伝子を単離することを検討した。現在、パキテン期の細胞を分離しこの細胞からmRNAを単離し遺伝子ライブラリーを作製している。このライブラリーには減数分裂期のDNA相同組み換えに関与する遺伝子が濃縮されている。今年度はこの遺伝子ライブラリーのEST化を行いクローンのシークエンスを行った。現在約500遺伝子の解析を終了しているが、そのうち約30%は現在までに減数分裂期に報告のない遺伝子であった。現在これらの500遺伝子をガラスアレイ上にスポットを行いcDNAマイクロアレイを作製している。今後このパキテン期cDNAマイクロアレイを用いTLS遺伝子の標的遺伝子の単離を目指していく。
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