進行癌患者にはしばしば溶骨性骨転移が起こる。癌の骨転移巣での溶骨の機構として(1)腫瘍細胞が直接骨を破壊する、(2)腫瘍細胞が破骨細胞分化、活性化刺激因子を分泌し、活性化した破骨細胞が骨を破壊するとの2説がある。本研究ではヒト腫瘍組織を用いてこの2説について検討する。具体的には(1)種々の腫瘍組織におけるカテプシンKの発現を検討する。(2)破骨細胞分化、活性化刺激因子としてのRANK(receptor activator of NF-κB)ligandの各腫瘍組織における発現を検討する。本年度は、抗カテプシンK抗体を用いた免疫組織化学およびWestern blot法により各腫瘍組織でのカテプシンKの発現を検討した。材料としてヒトの腫瘍組織(患者のインフォームドコンセントを得ている)を用いた。それらは、乳癌(5例)、肺癌〔扁平上皮癌(3例)、腺癌(2例)、小細胞癌(2例)、大細胞癌(1例)〕、前立腺癌(9例)、腎癌(1例)、甲状腺癌(2例)、多発性骨髄腫(1例)、膀胱癌(8例)、食道癌(4例)、胃癌(5例)、結腸(5例)、直腸(5例)癌、胆管癌(6例)、膵癌(4例)組織である。抗カテプシンK抗体による免疫組織化学的検討によるカテプシンK陽性例は、乳癌:4/5、肺癌〔扁平上皮癌:1/3、腺癌:0/2、小細胞癌:2/2、大細胞癌:1/1〕、前立腺癌:0/9、腎癌:0/1、甲状腺癌:1/2、多発性骨髄腫:0/1、膀胱癌::4/8、食道癌:3/4、胃癌:1/5、結腸:1/5、直腸癌:3/5、胆管癌:3/6、膵癌0/4であった。各々の組織1例づつを用いてWestern blot法にて27kdの部位にカテプシンK蛋白の発現を確認した。
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