研究概要 |
本年度は研究計画に基づき以下の成果をあげた。 1.Crk発現誘導可能な細胞株の樹立と細胞運動能の解析:癌遺伝子であるv-Crkを発現誘導可能なラット線維芽細胞3Y1を樹立したところ、v-Crkを誘導後48時間以内に著明なアクチンストレスファイバー形成が観察された。このストレス倍バー形成はRho抑制因子であるボツリヌス菌体外毒素の成分であるC3で処理することによって抑制され、また、Rhoの下流因子であるROCK阻害薬であるY27632により同様の抑制が起こることから、CrkがRhoを活性化することを見出した。この成果は下記の学術雑誌に現在印刷中であり、また学会発表を行った。 2.Crkを介する細胞運動能を調節するシグナル伝達機構の解析:現在はさらにCrkが細胞骨格を制御するメカニズムを詳細に解析するためにヒトCrk-llをGFPと融合させた状態で発現誘導可能な細胞株を樹立を試みた。具体的なコンディショナル発現誘導系は、テトラサイクリンによる発現OffとIPTGによるONの両方のプロモーター領域を兼ね備えておりタイトな発現調節が期待されるpOPTETベクターを使用した。現在は一過性発現系では成功しており、安定株を樹立中である。また、dominant negative formのRho-N19(Silvio J Gutkind,NIHから入手済み)、あるいはROCK(京大成宮周教授から入手済み)を導入してCrk発現による運動能活性化を抑制することを確認している。 (1)Tsuda, M., Tanaka.S., Sawa, H., Hanafusa, H., and Nagashima, K. Signalling adaptor protein v-Crk activates Rho and regulates cell motility in 3Y1 rat fibroblast cell line Cell growth & Diff, 2002. in press (2)津田真寿美、田中伸哉、澤洋文、長嶋和郎:アダプター分子Crkのアクチンストレスファイバー形成能の解析。 第90回日本病理学会総会 2001.4.5-7東京 (3)津田真寿美、田中伸哉、西原広史、澤洋文、長嶋和郎:アダプター分子v-Crkによるアクチン細胞骨格制御と細胞運動能の解析 第24回日本分子生物学会年会 2001.12.9-12横浜
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