研究概要 |
本研究はアダプター分子CRKを介する癌細胞の浸潤メカニズムの解析を行い以下の新しい知見を得て論文発表を行った(2)は現在投稿中である。尚、(1)から(4)は研究代表者がCorresponding authorである。(5)は共同研究での成果である。 (1)vCrkによるRhoの活性化:活性化型Crkであるv-Crkの発現誘導細胞を樹立して細胞の運動能および浸潤能を検討したところvCrkはRhoを活性化しストレスファイバー形成を促進することが判明した(Tsuda, et al. Cell Growth & Differ)。 (2)Crkによるヒアルロン酸CD44細胞運動系の制御:CrkはRho-GDIと結合することでRhoを活性化しさらに、ERMファミリー蛋白質を制御することで、ヒアルロン酸とその受容体であるCD44依存性に細胞運動能を亢進することを明らかにした(Tsuda et al.投稿中)。 (3)Crkのヒト遺伝子解析単離解析とヒト癌組織を用いた分子病理学的解析:Crkはヒト癌細胞で高い発現が認められたが、その遺伝子レベルでの変異は検索した限りでは認めなかった(Nishihara, et al. Cancer Letter)。 (4)ヒト血球系腫瘍細胞株におけるCrkLの解析:Crkの浸潤能にはRacの活性化因子DOCK180が関与することが考えられていたが、今回ヒト白血病細胞株ではCrkLとDOCK2がその接着・浸潤能を制御することを明らかにし(Nishihara, et al. Blood)、特にその下流因子は線維芽細胞ではRac1であることが判明していたが、血球系細胞ではCrkL/DOCK2/Rac2が機能することを明らかにした(Nishihara, et al. BBRC)。 (5)CrkLSH3領域結合蛋白質の同定:CrkLのSH3領域を用いたTOFF-MASS解析を用いた結合蛋白解析でASAP1がCrkLと結合することが判明し、RhoGAPを介して細胞運動を制御する可能性が示唆された。
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