mi遺伝子座がコードするbasic-helix-loop-helix leucine zipper型転写因子(MITF)のマスト細胞における転写調節機構を、突然変異マウスを用いて解析した。mi遺伝子座の突然変異マウスのうち、mi/miマウスはbasic domainの1アミノ酸を欠損する異常なMITF(mi-MITF)を正常量発現するのに対し、tg/tgマウスはプロモーター領域への挿入突然変異によりMITFを発現しない。mi/miマウスとtg/tgマウスのマスト細胞の表現型を比較すると、mi/miマウスのマスト細胞でより異常の程度が強かった。このことは、mi-MITFが転写に対して抑制的に働くことを示唆する。今回、basic domainの大半を欠損するmi^<ew>/mi^<ew>マウスのマスト細胞をtg/tgマウスと比較した。その結果、mi^<ew>/mi~<ew>マウスのマスト細胞の異常の程度は、tg/tgマウスのマスト細胞の異常の程度と同程度であった。basic domainの1アミノ酸の異常では抑制性の機能を有していたのに対し、basic domainの大半のアミノ酸を欠損することであらゆる機能がなくなることがわかった。また、two-hybrid assayによってMITFと結合するタンパク質としてzinc finger domainをもつ転写因子であるMAZRを単離した。MAZRはzinc finger domainでMITFのzipper domainと結合し、マスト細胞で高発現しているプロテアーゼの一種であるmMCP-6遺伝子の転写活性をMITFと相乗的に高めることも見い出した。以上の結果より、MITFを中心とした転写因子ネットワークがマスト細胞の分化に重要であることを明らかにした。
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