肺腺癌におけるK-ras遺伝子変異の意義を明らかにする目的でPI3K-Akt経路に着目し検討を行い、平成13度はK-ras変異が同経路介して気管支上皮細胞の走化性の亢進を引き起こすことを明らかにしてきた。昨年度は、1)抑制変異型Akt(dnAkt)膜貫通蛋白質tatとdnAktの融合蛋白質を作成し同様の検討を試みた。 1)dnAkt導入気管支上皮細胞株は細胞走化性の低下を示した。また、数回の経代を繰り返すと、導入したdnAkt遺伝子の発現が徐々に低下した。このことから、Aktが細胞の恒常性(生存)の維持に重要な意義を持つ可能性が示唆された。 2)tat-Aktを細胞に発現させるとその局在がnativeなAktと異なり細胞内に瀰慢性に位置した。また、tat-Aktやtat-GPFを陰性対照として導入したが、何れも細胞内に瀰慢性に位置し、導入された細胞に変性や細胞死を引き起こした。以上から、tatがAktの機能に異常を与えている可能性が考えられ、dnAktの効果を純粋に評価することが困難であった。また、tat自身が細胞傷害性を有する可能性が示唆された。 Tat-融合蛋白の治療への応用については更に詳細な検討が必要と考えられた。
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