研究概要 |
本研究では、肺組織をモデルとして、肺胞マクロファージ(Mφ)や上皮細胞におけるパターン認識受容体の作用機構と、自然免疫に対する役割を解明することを目的とした。特に本年度は、肺上皮細胞株A549および単球/Mφ系細胞株U937, MONO-MAC-6を用いて、種々のパターン認識受容体の発現動態と、そのシグナル伝達系について検討を加えた。 はじめに、CD14, TLR2, TLR4に対する特異的抗体を用いて、肺上皮細胞株および単球/Mφ系細胞株における、これらパターン認識受容体の発現をFlow cytometryで解析した。その結果、単球/Mφ系細胞株はCD14, TLR2, TLR4を全て発現しており、大腸菌LPS刺激に応答して、炎症性サイトカインIL-1β, TNF-αの産生、および、殺菌ペプチドβ-defensin(hBD2)の発現が誘導された。 一方、肺上皮細胞株A549では、CD14, TLR2, TLR4の発現はほとんど見られず、LPS刺激によるIL-1β, TNF-α産生やβ-defensin発現の誘導も認められなかった。これらの結果から、肺上皮細胞と単球/Mφ系細胞におけるLPS応答能の違いは、主としてパターン認識受容体分子(特にCD14, TLR4)の発現の差によるものと示唆された。 さらに、hBD2プロモーターを用いて単球/Mφ系細胞におけるLPS応答能について検討したところ、hBD2プロモーター中に含まれる2カ所のNFκB部位がLPS応答に必須であった。そして、LPS刺激にともない、転写活性型のp50/p65ヘテロダイマーが誘導され、これらのNFκB部位に結合して遺伝子発現を活性化することがわかった。
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