スフィンゴミエリンに特異的に結合するミミズ毒素ライセニンの無毒化変異体・161-297に、蛍光蛋白(Venus・mRFP)を融合・発現する系を構築し、生きた細胞でスフィンゴミエリンを標識することが可能になった。このプローブが認識するスフィンゴミエリンは、従来用いられてきた蛍光スフィンゴミエリンとは、生化学的性質も異なり、エンドサイトーシスの経路が異なることを見つけた。 このプローブと抗体・それに対する二次抗体を用いることで、細胞表面のスフィンゴミエリン・ドメインを集合させることが出来る。Jurkat T細胞の細胞表面のスフィンゴミエリンを無毒化プローブ・一時抗体で標識し、二次抗体が固定されたディッシュに撒くことで、ドメインを集合させた。ディッシュに接着開始から15分ほどで細胞の増殖の指標であるERKが活性化されることが観察された。この時のディッシュに接着した細胞は突起を伸ばしながら広がり、TRITC-ファロイジンで重合アクチンを標識すると、アクチンの形成が接着面に観察された。 二次抗体を固定化せずに、同様のスフィンゴミエリン・ドメインを集合させる実験を、線維芽細胞を用いて行ったところ、細胞形質膜が劇的に波打っているのが観察された。この波打ち現象は、細胞骨格を制御する低分子量G蛋白質Rhoの優勢劣性型(DN)を発現させることで抑制されたが、RacやCdc42HsのDNでは抑制されなかった。 前年度の結果では、ファイブロネクチン刺激をしても、接着斑を構成する蛋白質とは挙動同じではなかったが、本年度得られた結果は、スフィンゴミエリンが形成するドメインには、アクチンを制御する分子が存在し、抗体によって集合させることで、活性かされ、何らかの信号伝達が起こることを示唆している。
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