申請者は、熱帯熱マラリア原虫HB3株とDd2株の遺伝子交配子孫株を用いたポジショナル・クローニングにより、ラット赤血球への侵入能力と関連を示す領域を第四染色体サブテロメアに同定した。この領域には、既知の赤血球結合蛋白の相同体や、既知の蛋白とは全く相同性を示さない蛋白が存在する。そのうち、既知の赤血球結合蛋白の相同体について、ラット赤血球への侵入に関与しているのか、さらには、ヒト赤血球侵入へも関与しているのかを検討するのが目的である。 この領域の遺伝子群を熱帯熱マラリア原虫ゲノム計画で公表されている遺伝子情報を用いて解析した結果、三日熱マラリア原虫の網状赤血球結合蛋白と構造が類似する新しい遺伝子が存在することを見出し、P. falciparum Reticulocyte Binding Protein Homologue 4(PfRH4)と名づけた。cDNA配列とgDNA配列との比較よりエクソン・イントロン構造を決定した。Real-Time PCRの結果、この遺伝子は、HB3株とDd2株の両方においてほぼ同様に、転写されていることが確認された。さらに、蛋白レベルでの発現を調べるため、ラットを用いて抗体を作製し、Western blotおよびImmuno fluorescence assayを行った結果、この蛋白は少なくともHB3株においては220kDaの蛋白として発現しており、赤血球侵入型原虫であるメロゾイトの先端部に局在していることが分かった。また、アメリカ、アフリカ、およびアジア由来の熱帯熱マラリア原虫株において多型がほとんど見られなかった。
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