平成13年度の研究計画では、溶血性連鎖球菌が産生する外毒素であるストレプトリジンO(SLO)とNADaseの大量発現系を構築し、毒素タンパク質間の相互作用を解析する予定であった。lacプロモーターを利用した大腸菌での発現やT7プロモーターによる大腸菌ライゼートを用いたセルフリーシステムを利用しても、目的のタンパク質は発現しなかった。そこで、発現をより厳格にコントロールできる大腸菌アラビノースオペロンの発現調節制御機構を利用したところ、SLOだけが発現した。申請者は、SLOが上流に位置するNADaseと共にポリシストロニックに転写されていること、そして両遺伝子間に機能不明のオープンリーディングフレーム(ORF1)が存在することに着目し、このORF1がNADaseの発現に必要ではないかと考えた。この推測にしたがって両遺伝子を同時に発現させたところ、NADaseが大腸菌でも発現した。このORF1の遺伝子配列から予想されるアミノ酸配列は、既存のタンパク質とのホモロジーはなかった。ORF1の機能を明らかにするために抗体を作製して調べたところ、本タンパク質はlacプロモーターによる大量発現が可能で、SLOやNADaseとは異なり菌体内タンパクであることがわかった。ORF1は細胞内でNADaseの発現に関与していると思われる。また、N末端のアミノ酸配列を調べた結果、シャインーダルガルノ配列はNADaseの構造遺伝子内に位置していた。現在、ORF1のより詳細な機能と、SLOおよびNADaseの大量精製を行っている。
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