EHEC(O157:H7 Sakai株)の大腸上皮細胞定着に関与するintimin、TypeIII分泌系の構成因子であるEspA、EspB、ベロ毒素の標的細胞上のレセプターである糖脂質グロボトリオースセラミドに結合するBサブユニット(VT1-B)遺伝子をそれぞれクローニングし、植物形質転換に用いるためのバイナリーベクターを構築した。これらのベクターをType IV分泌機構を介して植物に感染することのできるAgrobacterium tumefaciensにエレクトロポーレーション法を用いて遺伝子導入した。次に、Lotus japonicus Miyakojima MG-20(ミヤコグサ)にA.tumefaciens LBA4404株を感染させ、抗原蛋白質をコードする遺伝子を導入した。このA.tumefaciensによる感染法ではミヤコグサの組織よりカルスを誘導、再分化させるという過程があり、形質転換植物の作成に約5ヶ月を要した。現在、上記4種類のEHEC(Sakai株)形質転換体第1世代を栽培中である。また、植物体における導入遺伝子発現の確認を行なうため、大腸菌BL21(DE3)を用いたEspA、EspB、intimin、VT1-Bサブユニットの大量発現系を構築した。発現システムはpETシステムを用い、His-taggedカラムにより粗精製を、その後ゲルろ過等を用いてより高純度のタンパク質を取得、抗体を作成している。現在までに、再生個体第0世代と同様に形質転換体第1世代植物におけるPCRにより遺伝子の挿入は確認済みである。導入した遺伝子を遺伝的に安定化させるためには、形質転換体の継代を繰り返し、安定した形質転換植物を得る。今後、形質転換植物よりタンパク質を抽出し、ウェスタンブロットなどによる発現の確認の後、動物実験を用い抗原特異的抗体の産生などを検討し、今後の経口ワクチン開発に役立てたい。
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