近年とくにカルバペネム耐性を引き起こすメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌や欧米ですでに院内感染などアウトブレイクが問題となっている基質拡張型β-ラクタマーゼ産生菌(ESBL)の出現が問題となりつつある。ESBL産生菌に関しては、Toho-1型や新型であるSHV-24型β-ラクタマーゼ産生株が分離されていることを報告してきた。最近CTX-M2など新たにCTX-M familyのβ-ラクタマーゼ産生菌も報告されてきているが、国内外でその疫学的実態を明らかにしたものは少ない。これらのβ-ラクタマーゼ遺伝子に共通していることは、いずれも伝達性プラスミド上に担われており、院内感染の原因となることである。 チオール化合物を用いたメタロ-β-ラクタマーゼの迅速診断法およびダブルディスク法を応用しTwin testにて菌を検出する方法を開発し、それらの研究途上で国内で初めてVIM2型メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌、CTX-M-3型β-ラクタマーゼ産生菌を検出するなど成果を挙げてきている。また、この比較的国内で稀なVIM-2型産生菌のアウトブレイクも検出し、臨床に貢献した。さらに今年度、国内で初めてIMP-2型メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌を検出し、これらがクラス1型インテグロン構造に担われていることが明らかとした。この内1株は、IMP-1型とIMP-2型の両方を持っており、それぞれ独立したインテグロン構造に担われていることも明らかとすることができた。 また、臨床分離カルバペネム耐性セラチアAK9373株からクローニングしたIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼ遺伝子は、クラス3型インテグロンという日本のみに認められている構造に担われていることが明らかとなったが、その全インテグロン構造をはじめて明らかとした。今後さらに臨床分離株でのこれらの遺伝子構造の分布を解析していく予定である。
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