全国から臨床分離されたアルベカシン耐性MRSAについて、既知のアミノグリコシド不活性化修飾酵素遺伝子の分布をPCR法により検討した。その結果、アルベカシン耐性を示す全てのMRSAが、アミノグリコシドアデニル化酵素aad(4')および二機能酵素aac(6')aph(2")を有していた。そこで、アルベカシン感受性黄色ブドウ球菌内への二機能酵素aac(6')aph(2")発現系を構築し、アルベカシン耐性試験を行った結果、耐性化は示さなかった。このときの、二機能酵素aac(6')apL(2")によるアルベカシン修飾能および修飾物の抗菌活性を検討した結果、アルベカシンに対するアセチル化反応はほぼ100%進行したが、リン酸化反応は酵素力学的に非常に進みにくいことが明らかとなった。さらにアセチル化アルベカシンは10%程度の抗菌活性を有し、完全には不活性化されないことが示された。以上のことより、MRSAのアルベカシン耐性化には、二機能酵素による6-N'アセチル化反応以外の因子も必要であると考えられた。現在までに高度の不活性化修飾を受けることによりアルベカシン耐性を示す臨床分離MRSA菌株、および実験室的に得られた二機能酵素の発現量および活性能の上昇を伴わずにアルベカシン耐性を示すMRSA菌株が得られ、これらを用いて耐性化機構に関する解析を進めている。
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