研究概要 |
ツツガ虫病の起因菌Orientia tsutsugamushiはリンパ球や血管内皮細胞など細網内皮系細胞に主に感染する.その結果,ヒトには免疫応答など様々な生体反応が誘発され,発熱,発疹,CRP,肝酵素の上昇などの症状が起きる.また,一部の患者は播種性血管内凝固(DIC)をおこし重症化する. そこで,本研究ではツツガ虫病の免疫応答と病態の関係に注目し解析をおこなった.まず,患者の発生状況や臨床所見に関して行った調査票による疫学調査の中で,特に免疫応答に関連するリンパ球を含む白血球減少,DICなどの所見に注目し疫学的な解析をおこなった.その結果,主に春に発生が多くGilliamおよびKarp株の感染が多い東北・北陸地方は白血球減少およびDICをおこす頻度が高く,症状が比較的重いこと,一方で秋に発生が多くKawsakiおよびKuroki株の感染が多い関東および九州地方では頻度が低く,症状が軽いことが明らかになった.これらの結果から,本菌の血管内皮細胞やリンパ球への感染による免疫応答が病態と密接に関係している可能性が示唆された.次に,疫学調査で得られた結果をもとにヒト臍帯内皮静脈細胞(huvec)に病原性の強いKarp株を感染させ,免疫応答のメディエーターであるサイトカインの誘導を解析した.huvecにKarp株を感染後,感染細胞からRNAを抽出しRT-PCRによりmRNAレベルでサイトカインの発現を解析した,その結果,感染後72時間でIL-6,8,GMCSF, MCP-1,RANTES, TNFαの発現がみられた. 今後,継時的な解析,株間による違いなどを解析予定である.また,同様の方法で単球を用いた解析,またhuvecを用いた血管透過性の変化の解析を行いin vitroにおける各細胞の役割・応答を解析する予定である.
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