ボルナ病ウイルス(BDV)の脳内持続感染機構を解明するため、BDVのウイルス産生において必須の過程である核内外へのウイルスゲノム、タンパク質の輸送機構について詳細な解析を行った。 [平成13年度研究実績] BDVヌクレオカプシドタンパク質(N)の輸送機構の解明 BDVゲノムに直接結合し、ウイルスゲノムを含むリボヌクレオ複合体(RNP)の構成因子であるNタンパク質はその領域内に核移行シグナルに加えて、核外輸送シグナルを保持することにより、RNPの核内外輸送に深く関与することを明らかにした。さらに、Nタンパク質の核外輸送活性はBDVリン酸化タンパク質(P)により阻害されることからウイルスタンパク質間の相互作用がRNPの輸送調節に関与しているが示唆された。 BDVXおよびPタンパク質の相互作用による細胞内局在の調節機構の解明 同一のmRNAから翻訳されるBDVXおよびPタンパク質は、各々の発現量が感染細胞内で調節されることより、ウイルス複製に深く関与していることを明らかにした。すなわち、Xタンパク質の発現量がPタンパク質と比較して高くなるとXおよびPタンパク質複合体は細胞質に局在し、逆にPタンパク質が高くなると、これら複合体は複製の場である核内に局在した。XおよびPタンパク質はRNP構成因子であることから、BDVの核内外輸送機構はRNP構成因子の発現量比および結合様式により調節されていることが示唆された。また、これらXおよびPタンパク質複合体は相互作用することにより、単独では保持していない輸送活性を示すことから、今後より詳細にこの細胞内局在調節機構を解析する必要があると考えられる。
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