1.組換え体を用いた試験管内RNP複合体再構成系の構築と、p48によるRNP形成促進の観察。 インフルエンザウイルス遺伝子RNAが転写・複製反応の鋳型として機能するためには、ウイルスタンパク質NPと結合しRNP複合体を形成する必要がある。宿主因子RAF-2p48存在下、放射線標識した短鎖モデルウイルスRNAとNPを混合しRNPの再構築を試みた結果、RNP形成がp48の共存によって有意に促進されている事が観察された。この促進反応はATP非依存的であり、p48アミノ酸配列から予想されているATP依存的RNAヘリケース活性はRNP複合体形成促進に必須ではないと考えられる。 2.p48・NPの欠損変臭体作成と、両者の結合に関与する部位の特定。 NP-p48結合に関与する最小領域を決定する事を目的としで様々なNP・p48欠損変異体を作成した。これら変異体を用いたGST融合体によるプルダウンアツセイによって、NPについてはアミノ末端20残基程度がP48に対する最小結合領域であることが明らかになつた。一方、p48についてはカルボキシル末端側200残基程度がNPとの結合に関与する事を確認したが、実際に結合に関与する残基はこの領域に点在すると推測され、ペプチド単位での結合領域の同定には至らなかった。 3.細胞内におけるp48欠損変異体の局在から予想される機能部位。 報告者はすでに、RAF-2p48が非感染細胞ではウイルス遺伝子転写・複製の場である細胞核内スプライヤオソームに局在し、感染細胞では核内全体に局在する事を確認している。p48をアミノ末端側248残基とカルボキシル末端側180残基に分割し細胞内での挙動を観察した結果、アミノ末端側に核移行ジグナルが存在する事、スプライセオソームへの局在はカルボキシル末端側が関与している事が明らかになった。
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