本研究では、B型インフルエンザウイルスにユニークなBM2の細胞質内における性状を詳細に解析し、その機能を明らかにしようとした。 感染細胞内におけるBM2の経時的な局在の変化を、他のウイルス蛋白質と共に間接蛍光抗体法で解析した。その結果、BM2は合成後ゴルジ装置に検出され、その後、細胞膜へと輸送された。この局在の変化はウイルス表面糖蛋白質ヘマグルチニン(HA)と酷似していた。そこで、膜蛋白質の輸送阻害剤であるモネンシンを用いてゴルジ装置から細胞膜への輸送を阻害すると、BM2はHAと同様にゴルジ装置へ蓄積し、細胞膜への輸送が阻害された。これらの結果は、発現プラスミドを細胞に導入し、BM2を単独で発現させた場合にも再現された。次に、BM2と細胞膜との結合の有無を明らかにするために、感染細胞をショ糖密度勾配遠心によるflotation法で分画し、各画分中のBM2をwestern blot法で検出した。その結果、BM2はHAと共に膜画分に検出された。また、BM2の膜への輸送に関わる部位を同定するために種々の変異体BM2を作出し、間接蛍光抗体法でそれらの局在を解析した。その結果、アミノ末端から50番目までのアミノ酸がBM2の細胞内輸送に重要であることが明らかとなった。 以上の結果から、1)BM2は合成後速やかにゴルジ装置に局在し、トランス-ゴルジ輸送経路を介して細胞膜へ輸送されること、2)この輪送にはBM2分子のアミノ末端から50番目までのアミノ酸が重要であること、3)この現象はBM2単独でも起こることから、BM2の細胞質内輸送には他のウイルス蛋白質は直接関与していないこと、4)BM2は細胞膜と結合している膜蛋白質であることが明らかになった。
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