研究概要 |
自然免疫反応を誘起するTLRファミリーはマウスやヒトで12個存在し、各TLRが異なる病原体を認識することが明らかとなりつつある。これらTLRに特異的なリガンド(病原体成分)を用いて樹状細胞を刺激すると樹状細胞は成熟分化する。 本研究では、野生型マウス、MyD88遺伝子欠損マウス、および種々のTLR欠損マウスの骨髄細胞をGM-CSF存在下で培養し、分化誘導した骨髄由来未熟樹状細胞を用いた。TLR4のリガンドとしてLPS、TLR2のリガンドとして合成リポペプチド、TLR9のリガンドとしてCpG oligo DNAを用いて樹状細胞を刺激し、刺激により発現誘導される遺伝子について検討を行った。その結果、刺激を行うリガンドの種類により、発現する遺伝子の種類に差が見られ、また遺伝子発現の経時変化にも特徴が見られた。 1,TLR4のシグナル見られるMyD88を必要としないシグナル伝達経路により、まずインターフェロン-β(IFN-β)が誘導され、そのIFN-βが2次的にIFN誘導性遺伝子群を発現誘導していることが明らかとなった。 2,TLR2のシグナルはMyD88を必要としており、MyD88欠損樹状細胞ではリガンド刺激による遺伝子の発現誘導が見られなかった。好生型で刺激により発現する遺伝子の種類は炎症性サイトカイン等であった。 3,TLR9のシグナルもMyD88を必要としていた。遺伝子発現の経時変化は、TLR2やTLR4に比べて遅延していた。発現する遺伝子は炎症性サイトカインの他にIFN-βと、IFN-βにより2次的に発現誘導するIFN誘導性遺伝子群であった。 さらに、MyD88欠損樹状細胞はLPS刺激により成熟し、T細胞活性化能を獲得することが明らかとなった。LPSの刺激は、野生型樹状細胞にTh1細胞分化を促すが、MyD88欠損樹状細胞にはTh2細胞分化を誘導することが明らかとなった。
|