膜マイクロドメインのサイトカインシグナル伝達における役割について検討を行った。Methyl-β-cyclodextrin(CD)は膜マイクロドメイン依存的なシグナル伝達を阻害する。HepG2細胞をCDで処理したところ、IL-6刺激時のSTAT3リン酸化・転写活性化能は著しく減弱した。この減弱はコレステロールの添加により回復された。gp130は0.05%Triton-X100には不溶性であるものの、0.5%Triton-X100によって可溶化されることからRaft/DIG/GEM(detergent insoluble glycolipid enriched membrane)とよばれる領域とは異なる領域に存在することがわかった。gp130は炭酸ナトリウムを用いたショ糖密度勾配遠心分離で低密度膜画分に分画することができた。またSTAT3もこの分画法によりgp130と同画分に存在することがわかった。一方、SHP2は同画分には回収されなかった。LAT(linker of activated T-cells)はRaft/DIG/GEMに存在する分子であるが、その局在はC末のシステイン残基への脂肪酸修飾に依存している。このシステイン残基への変異導入はRaft/DIG/GEM領域への蛋白質の局在を阻害するが、炭酸ナトリウムを用いたショ糖密度勾配遠心分離での分画には影響を与えなかった。これらの結果から、低密度膜画分には0.5%Triton-X100に不溶性の領域と可溶性の領域が存在し、gp130はその可溶性の領域に存在することが示唆された。低濃度リガンド刺激時のgp130の効率的なシグナル伝達はSTAT3経路においてのみ観察されるが、これはSTAT3を含む受容体複合体が低密度膜画分において形成されているためであることが考えられる。
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