研究概要 |
本年度は、夜間にパソコン作業を行ったときの生理変動を明らかにするための実験室実験を行った。被験者は健常な成人男性7名であった。パソコンの作業条件は作業の種類を2条件(単調/複雑)とディスプレイの明るさを2条件(明/暗)とした。複雑作業にはシューティングゲームを用い、単調作業には簡単な足し算課題を用いた。明条件の画面輝度は120カンデラ,暗条件では0.5カンデラであった。パソコン作業は午後11時から翌日の午前2時まで行い、その間に生体リズムを反映する指標として直腸温、唾液中メラトニン濃度、脳の覚醒状態を反映する指標として脳波を測定した。その結果、明るい画面と複雑な作業で、それぞれ独立に夜間に低下するはずの直腸温の低下が有意に抑制されていた。また明るい画面と複雑作業が組み合わさった条件では、夜間に増加するはずのメラトニンの分泌が有意に抑制されていた。脳波には,画面の明暗の影響は認められなかったが、複雑作業で眠気の増加が有意に抑えられていた。以上の結果から、夜間に脳の興奮を引き起こすような複雑なパソコン作業を行うと、本来の生体が持つ夜間の生理変動を抑制することが明らかとなった。また複雑作業に明るい画面が加わるとその傾向はより一層大きくなることが明らかとなった。現在はパソコン作業によるこれらの生理変動が睡眠にどのような影響を及ぼすかを明らかにするために、睡眠時に測定した睡眠ポリソムノグラムの結果を解析中である。
|