本研究では、髄膜腫の症例・対照研究を行い、髄膜腫の発症に関わる環境・宿主要因を明らかにすることを目的としているが、特に次の3つの点に焦点をあてて検討中である。 1)乳がんの発症要因といわれている生活習慣、妊娠・分娩歴、肥満度などに加えて、職業歴、有機塩素系化合物の主な曝露原である魚介類の摂取量、喫煙・飲酒習慣などについて質問票を用いた調査を行い、外因性女性ホルモンとの関連性を間接的に検討する。現在までに、脳神経外科に加療目的で入院した55名の症例に対して研究内容の説明を行い、生活習慣に関する質問調査と手足のつめの提供への同意をそれぞれ53名と51名より得ている。2名の者については、質問調査、つめの提供のいずれも同意を得られなかった。平成14年度もさらに継続して、症例群と対照群の収集に努める予定である。 2)症例群と対照群について喫煙、受動喫煙の分布と生体内でのカドミウム曝露の状態を比較することを目的として、対象者の手足のつめを回収している。現在、つめの微量金属測定に関しては、健常人のつめを用いた予備的解析と測定条件の検討を終えている段階である。 3)また、パラフィン包埋病理標本を用いて、生体内での必須金属の貯蔵・運搬や重金属毒性の軽減などといった生理的機能を有しているメタロチオネインの脳腫瘍組織と正常脳組織内の発現分布を比較検討する予定であり、倫理的問題点を検討した上で、準備をすすめつつある。
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