本研究では、髄膜腫の症例・対照研究を行い、髄膜腫の発症に関わる環境・宿主要因を明らかにすることを目的として、以下の項目について検討した。 1)生活習慣、特に喫煙と髄膜腫リスクについて 鹿児島県内で平成12年より新たに発症した髄膜腫症例12名、悪性腫瘍以外の脳疾患症例21名と地域住民から抽出した対照群63名の女性対象者について妊娠・分娩歴、肥満度、職業歴、魚介類の摂取量、喫煙・飲酒習慣などについて質問票を用いた調査を行った。喫煙に関しては、対照群との比較において、喫煙者で髄膜腫リスクの上昇傾向を認めたが、統計学的有意差は認めなかった。またこれまでの他の研究報告によると、受動喫煙が髄膜腫の発症リスクを高めるとの報告があるが、今回の結果ではそのような傾向は認められなかった。職業については、髄膜腫発症と有意に関連している職業は観察されなかった。この結果については、対照群を鹿児島県内の地域住民から得たわけであるが、緑茶生産や農業の盛んな地域から得ていたことに問題があると考えられる。その他、妊娠・分娩歴、魚介類の摂取量についても3群間で統計学的有意差は確認されなかった。 2)喫煙習慣と生体内のカドミウム蓄積濃度について 同意の得られた対照者より、手足のつめを回収して微量金属(As、Cd、Se、Zn)濃度についてICP質量分析装置を用いて測定し、その平均濃度を喫煙習慣別(喫煙者、禁煙者、非喫煙者それぞれ約50名ずつ)に比較した。いずれの微量金属も3群間において有意差は認めなかった。
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