研究概要 |
1.2001年5月9目から2002年6月9日にわたり、虚血性心疾患のハイリスクグループとして、協力施設に通院中の血液透析患者を対象に、自記式の質問紙調査を行い、抑うつ度(BDI-II)、アレキシサイミア度(TAS-20)、ソーシャルサポート(SSQ)に関する評価を行なった。また虚血性心疾患および血液透析の予後予測に適すると考えられている長期心拍変動についても、24時間ホルター心電図データを解析して検討した。期間中、対象基準に合致した249名中167名が調査協力に同意し、157名が調査を終了した(男性85名、年齢55.5±10.0才,女性72名、年齢=54.3±9.6)。透析の自己管理力の指標である体重変化率が高い群は低い群にくらべ抑うつ度、アレキシサイミア度のいずれも有意に高かった。先行研究で透析患者の生命予後と強い関連が見られたTriangular IndexおよびULF Powerは、透析患者の栄養指標である蛋白異化率(PCR)、および複数の身体的・心理的QOL指標と、軽度ながら有意な相関を示し、また抑うつとも関連傾向が見られた。 2.ベースライン終了者に対し、順次6ヵ月後に再調査を行った。2001年5月〜2002年6月にかけて、158名中149名から再調査への協力を得た。ベースラインからの回帰予測値を上回り抑うつ傾向が高まった群は、その他に比べ、ベースライン時の透析前BUN、アレキシサイミア度が高く、PCRが低かった(P<0.05)。性、年齢、透析年数、心拍変動指標、体重変化率では差がなかった。 以上の結果から、心理社会的要因が患者の自己管理力と強く関連し、また、心拍変動指標は身体状況と心理的状況の双方に関連していることが分った。今後はさらに追跡調査を行い、これらの長期的予後への影響、特に虚血性心疾患との関連を明らかにしていきたいと考えている。
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