平成13年度の結果を受けて、平成14年度は、嗅覚検査機器の完成を最大の課題とした。流量の調整精度や、曝露濃度の精度検証が完了していないものの、実用段階の開発は今年度で完了した。ただし、今年度開発中に、検査に用いる曝露物質を何にすることが適当なのかが問題になり、機器開発を継続するとともに、患者の嗅覚特性についての検討を行った。 嗅覚特性の研究は、化学物質過敏症と考えられる25人と、年齢と性別をマッチングさせた対照者25人に、ペンシルバニア大学式嗅覚識別検査(UPSIT)と、その国際版であるCross-Cultural嗅覚検査を施行し、その反応の違いをみることで行った。また、この検査には元来含まれていないものであったが、嗅覚検査で用いられた物質が、快と感じるか、不快と感じるかの項目を追加し、被験者の情動的反応に差が認められるかも合わせて検討した。 この結果、嗅覚検査物質が正しく認識できたかでみた場合、つまり、嗅覚検査の正答率でみた場合、化学物質過敏症群と対照群に明らかな違いは認められなかった。一方、嗅覚検査使用物質が快か不快かの回答についてみた場合、化学物質過敏症群で有意に不快と回答する物質が多いことが認められた。 また、一人あたりの不快と回答する物質数も、対照と比較して有意に多かった。このことから、化学物質過敏症群では、嗅覚刺激物質の弁別においては対照群と変わらないものの、それをどのように感じるかという点に差がみられるのではないかということが示唆された。 この中で、差がみられた物質に揮発性の有機物が含まれているため、次年度以降は、この揮発性の有機物を使用して、果たして、嗅覚の閾値には差がないかを新しく開発した機器を用いて検討したい。
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