前回の補助により、ビタミンK(K)摂取による耐糖能改善への可能性が示唆され、増加する成人発症型糖尿病、特に耐糖能異常等をきたす初期の段階での発病予防へKの果たす役割が期待された。今回の同補助により、培養膵細胞における実験医学的側面と、ヒトにおける臨床栄養学的側面の両面から糖代謝とK状態との関係についてさらに検討が進められた。 1)培養膵細胞における実験医学的検討。 本科学研究費の補助により培養関連機器が導入され、RIN-5F等本研究に最も適した株の培養が行われたが、膵細胞の成長、インスリン分泌能に対するKの効果について、一定の見解を得るに充分な結果は得られなかった。この原因として、Kが脂溶性であり、溶剤として用いるエタノールの影響等も考慮された。今後はより生体内でのKの存在形式(カイロミクロン等脂肪酸ミセル形式)に近い状態で検討することも必要と考えられた。 2)ヒトにおける糖代謝とK状態の関係についての臨床栄養学的検討。 若年男性において、骨芽細胞由来のK依存性蛋白質であるオステオカルシン(OC)の活性型と低活性型成分が、糖負荷により経時的に変化する事象を捉えた。これを学会発表したところ興味ある知見として評価され原著論文が掲載予定である。一方、骨の健康がより注目される高齢者において、OCの活性型と低活性型成分の関係は、骨量低下による骨そしょう症等の危険を予知する骨健康指標としての可能性が期待されたため、これを検討した。過疎化による働き手の減少により高齢でも農作業を継続せざるを得ない、農村高齢者を対象とし、血清中OCと尿中ミネラルを測定した。血清低活性型OC濃度高値男性群は、同低値群に比較し尿中Ca濃度が有意に高値を示し、同値が高齢者の骨健康の有用な指標である可能性、高齢男性における骨健康の重要性等が示唆された。この研究は、学会発表後、その成果は原著論文として掲載された。
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