研究概要 |
不登校(登校拒否)の児童生徒数は増加の一途をたどっており,学校保健の分野だけでなく社会的にも大きな問題となっている。不登校者数の増加を防ぐには発生率を把握した上で,その防止,予防の観点からアプローチする必要があるが,そのような取り組みはなされていない。 本研究では、登校回避感情がどのような要因と関連しているのか、その因果モデルについて検討を行った後,疫学手法を用いた縦断研究によって不登校の発生率を把握するとともに,不登校発生に影響を及ぼす要因を探索,定量的に評価し,不登校予防の取り組みのための基礎資料を得ることを目的とした。 まず、登校回避感情と関連する要因、及びそれらの要因がどのように結びついているのか、因果モデルを試作し検討したところ、抑うつ症状が登校回避感情と最も関連していた。また、日常生活ストレッサー、生活習慣などの登校回避感情に対する間接効果が確認された(第17回世界健康教育会議において発表)。この結果を踏まえて、以下の研究計画を作成した。 調査対象集団は茨城県内の公立中学校の生徒とした。茨城県内の5教育事務所(水戸,県北,鹿行,県南,県西)所轄の調査協力の得られた中学校のうち,8中学校を抽出し,各校に在籍する生徒約2,000人を調査対象とした。対象者は,調査開始時点で不登校の履歴が無い生徒とした。 平成14年1月から4月にかけて、ベースライン調査を実施中である。調査内容は、学校環境,家庭環境,社会環境,個人特性,問題行動歴(飲酒,喫煙,非行歴),各種生活習慣(食習慣,身体活動,睡眠),日常生活ストレッサー,抑うつ症状,ソーシャルサポートとした。 今後は、これら調査協力の得られた対象者を1年間追跡し,欠席,授業参加,保健室・校長室登校,他施設への登校状況を把握する。
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