1)心臓の拍動に伴って生じる体表面振動を衣服の上からセンシングする手法の有効性、2)バッテリ駆動による長時間使用に向けたアルゴリズム及び回路の検討を行なった。具体的には、ネクタイピン型センサ部品を製作し衣服の上から体表面振動加速度計測、加速度センサ駆動用直流電圧変換回路(DC-DC回路)の試作と評価、ウェアラブル多チャンネルデータロガーを用いた3軸体動加速度、心電図との同時計測とアルゴリズムを検討した。 (1)DC-DC回路の試作と評価 日常生活中に長時間に渡ってセンシングするためにリチウムイオン2次電池(定格3.7Vまたは7.2V)を用いる。容量型プリアンプ内臓の加速度センサが9〜20Vで動作するため、直流電圧を昇圧させる必要がある。市販のDC-DC回路が定格電流200mA以上であるのに対し、この加速度センサには10mA程度しか流れないため変換効率が30%程度であった。そこで、新規にDC-DC回路を試作し性能を評価したところ変換効率70%を得ることができた。この結果、7.2V、1350mAhのリチウムイオン2次電池による連続動作時間は従来機器の19時間から85時間へ延長した。 (2)3軸体動加速度、心電図との同時計測 日常生活中の動作パターンと心拍センシングの有効性を検証した。その際、歩数計型の生活習慣記録器(スズケン、ライフコーダー)も同時に用いた。その結果、安静立位、座位や電車内、睡眠中(ライフコーダーでは活動強度1)には心拍数のセンシングが可能で、歩行や運動中(同2以上)には測定不可能であった。1週間に渡りライフコーダーで活動強度を測定したところ、全体の90%以上は活動強度が1であり、開発機器が日常生活中心拍数の90%を測定可能であることがわかった。また、活動強度が2以上になるときの3軸体動加速度波形の解析から、スイッチとして体動加速度センサ(消費電流0.5mA)を使用可能であった。
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