日常生活中のエネルギ消費量や生活リズムをモニタする上で心拍は有用である。これまでに心電図による心拍モニタは研究開発されているが、心電図電極の煩雑さから一般的に使用されているものは無い。そこで、心拍動に伴って生じる体表面上の微小振動を衣服の上から加速度センサで計測することでウェアラブルセンシングを実現することを目指した。本研究では、生体の微小振動を計測可能な加速度センサのウェアラブル化に向けて、心拍計測のためのデータ処理アルゴリズムの検討を行なった。 健常成人男子5名(平均24歳)を対象に胸部体表の心尖部に加速度センサを貼り付け、心電図と同時にデータロガーに記録した。加速度センサは50Hz、心電図は250Hzにてサンプリングした。特徴量として、(1)振動の持続時間T、(2)心電図R波と振動ピークの時間ずれTd、(3)2つ目の振動振幅Sと1つ目の振動振幅Nの比S/Nを求めた。その際、連続する3心拍の平均値を計算した。その結果、振動の持続時間Tの個人差が小さいことがわかった。一方、心電図R波との時間ずれは個人によっても値が変化するため、心臓運動との関係を検証する必要がある。 小型データロガーを装着して、室内歩行時の計測を行なった結果、歩行時には体動加速度の方が体表面振動より大きく心拍が計測できない。安静時には周期的な安定信号が得られるのに対して、動くとランダムな信号になり振り切れることが多いことに注目し、計測信号の積分値が一定の範囲に入っているときのみデータを保存することで心拍に伴う振動信号だけが記録可能なようにした。
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