本研究は、先に開発した職業性及び環境起因性呼吸器疾患の為のHRCT国際分類をもちいて、その妥当性を検証し、自習用教材を開発し、疫学研究へと発展させることを目的とした。 現時点で、我々は、開発したHRCT国際分類をもちいて、読影実験を行ないその妥当性を現在検討中である。現状で入手できた結果を用いて読影者間一致度(inter-reader agreement)を検討したところ、すりガラス影、蜂窩肺を除いて、粒状影、不整形陰影、大陰影、胸膜肥厚など主要な所見の高い一致度が示された。このため、我々の開発したHRCT国際分類じん肺一般について記述する際に妥当性があることが示された。ただし、参照フィルムに関し、改善の必要な点も指摘されており、次の課題となる。 教育方法の開発のために、既に、開発に携わった4名の放射線科医に依頼し、HRCT国際分類をもちいた、講義を用意してもらった。自習用教材に発展させるためには、学習ポイントを階層的に絞込み、レベルごとに到達地点を明確にすることが必要と思われるが、これは未達成である。 また、開発された国際分類をコンピュータ上で使用できるようにするための検討にも入った。紙の読影票を用いた読影とコンピュータ上での記入によって入力の手間がどの程度、異なるのか検討する予定である。また、コンピュータ上で、症例集を表示することにより、自習用の教材に応用できる可能性を現在検討中である。 疫学調査については、現状で大規模スクリーニングを導入可能な職域を、国内においてはまだ、つかんでいない。元鉱山労働者の集団を100名ほど追跡はしているものの、数的には不十分であろう。ドイツ・フランス・フィンランドにおいては既にHRCTによる粉塵(主にアスベスト)暴露者のスクリーニングを行っているグループがある。彼らはHRCT国際分類の利用者となることは間違いなく、今後はどのような患者の属性情報、その他の臨床データを蓄積するかを協議する必要があろう。
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