目的・意義・背景:じん肺、特に、アスベスト(石綿)によるアスベスト肺は今や先進諸国における産業医学上最大の問題である。現行の胸部単純X線によるILO国際じん肺診断基準を補完する為にCTの為の国際じん肺診断基準の開発を行い、その国際分類の妥当性を検証し応用を試みた。 国際HRCT分類の構成:国際分類は文書による読影指針、読影票、そして、参照フィルムからなる。合意された参照フィルムは粒状影、不整形陰影、Dot-like lesion、蜂窩肺、肺気腫、胸膜肥厚などである。開発された国際基準が石綿肺などの極めて初期に見られるDot-like lesionなど、古典的珪肺、石綿肺では見られない所見をも記載できることから、じん肺一般に留まらず、職業性および環境性呼吸器疾患のためのHRCT国際基準とすることを提案している。 国際HRCT分類の妥当性・応用・発展:複数の放射線科医と呼吸器内科医により、読影実験を行い読影者間および読影者内一致度を検討し、ほとんどの所見について良好な一致度を得た。一致度の低かったすりガラス陰影については、参照用フィルムの改善など検討課題が残されものの、この国際分類を用いることで、粉塵曝露者のHRCT像を網羅的且つ半定量的に記載することができる。また、胸部単純写真の従来方式とデジタル方式による撮影の以外による陰影検討などの際に基準として用いることができる。このCT分類について、胸部X線単純によるILO分類と同様の方式で講習会を開催した。また、CT画像をコンピュータ画面で表示することにより、簡便に学習できる可能性を検討している。同時に地域のじん肺患者を追跡中である。 らせんCT検診と国際HRCT分類:らせんCTによる肺がん検診での国際HRCT分類応用の有用性は、肺気腫やびまん性陰影を合併した症例においての検討において発揮されるが、一般集団を対象とした検診よりも、やはり、粉塵曝露者において、一層重要となる。今後、粉塵曝露者に対するらせんCTとHRCTを併用した呼吸器検診について、その死亡率減少効果、実現可能性、費用効果分析等を検討していく予定である。
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