研究概要 |
本研究は、在宅要介護高齢者とその介護者を対象に、対象者の身体的・心理的・社会経済的状況を捉えた上で、在宅ケアの実施にかかる医療費や介護費用などを包括的に把握することを目的とするものである。今年度は、ある訪問看護ステーションの利用者(65組)を調査対象者とし、調査参加者は48組(参加率74%)であった。 要介護高齢者(被介護者)の平均年齢は79歳で、要介護度は、要介護度1〜3で6割を占めていた。一方、介護者は7割が女性で平均年齢は62歳であった。介護者のうち、代理の世話人がいる者は全体の3分の一であった。また、介護者が自分の体調を「あまり健康だと思わない」と答えていた者が55%を占めていた。介護負担感については、「かなり・非常に負担だと思う」と答えた者は全体の29%であった。 在宅ケアサービスの利用は、デイサービスの利用者は62%、ホームヘルパー44%、ショートステイ30%であった。調査月の介護保険請求額(利用額)は、対象者一人あたり平均8422単位(1単位10円)で、請求額が報酬限度額に占める割合は、平均34%であった。一方、医療保険の調査月の請求額は平均2371点(1点10円)で、調査月における介護保険と医療保険の請求合計額は、対象者一人あたり平均107,937円であった。 介護保険における「利用額」と「利用額が限度額に占める割合」について、介護者や被介護者の特性との関連を検討したが、介護者や被介護者の性別・年齢、要介護度、代理の世話人の有無、介護者の体調、介護者の介護負担感、のいずれにおいても、有意な関連は認められなかった。調査で把握されなかった他の要因、例えば介護保険制度におけるサービスの理解度、サービス利用の意向などが関連しているかもしれない。また、サービスの供給量が不充分であるため、利用が抑制されている可能性も否定できない。
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